「ラ・ファブリカ」と称されるレアル・マドリーのカンテラ、そのブランド力は絶大だ。
第一次政権で銀河系軍団を作り上げたフロレンティーノ・ペレス会長だが、第二次政権ではカンテラを軽視しなかった。「ジダネス・イ・パボーネス」の失敗例から、その危険性を肌で感じ取っていたのだろう。
スペインの育成年代の選手で、マドリーとバルセロナの2強からオファーを受け、断る選手は基本的にいない。幼い頃からのバルセロナファンだったとしても、マドリーからオファーが来れば、心が揺らぐ。「ラ・ファブリカの刻印」には媚薬のような、抗えない魔力がある。
マドリーとバルセロナのカンテラの違い。端的にいえば、それは育て方の差異だ。ヨハン・クライフが提唱した育成システムを重視してきたバルセロナは、選手を成長させてトップチームの戦力にすることを目的とする。一方、マドリーは売却を辞さない。純粋培養された選手でさえ、他クラブが高く買う可能性が生じれば、迷わずに売ってしまうのである。
だが近年、この2クラブのカンテラのパワーバランスに変化が生じている。バルセロナは、トップデビューしたカンテラーノを、早い段階で売るようになってきた。対して、マドリーはエラスムス(人材養成計画)を企み、レンタル放出を巧みに用いながら、ミドルスパンからロングスパンでトップチームの戦力になる選手を育てている。逆転現象が起きているのだ。