■「第二のマンC」として成功を収められるか。
世界のスーパーリッチがクラブを買い取り、プレミアリーグに資本参入するのは、ロシアの新興財閥、ロマン・アブラモビッチによる2003年のチェルシー買収が端緒と言えるだろう。石油産業で巨万の富を築いたアブラモビッチは、カネにモノを言わせた大型補強を毎年のように繰り返してチームを強化し、チェルシーをエリートクラブへと押し上げた。これを国家レベルでやったのが、マンCのアブダビであり、リーグは違うがパリSGのカタールだ。ともに政府系ファンドを通じて買収し、移籍市場に大金を投じて戦力を増強することでヨーロッパでも屈指のメガクラブへと成り上がった。
ちなみに、プレミアリーグでは20チーム中13チームが外国資本で、サウジアラビア人のオーナーはシェフィールド・ユナイテッドに続いてニューカッスルが2チーム目となる。
もっとも、新生ニューカッスルが「第二のマンC」として成功を収められるかは分からない。UEFAが制度化した「ファイナンシャル・フェアプレー」によって、今はオーナーがチーム強化に際限なく私費を投じることが禁止されているのだ。収支を度外視した大型補強は、もはや許されない。
今回の買収には、さらにもうひとつ気になる点がある。サルマン皇太子の存在だ。サウジアラビア人記者がトルコ・イスタンブールで殺害された2018年の事件は、サルマン皇太子が黒幕だったという疑いが根強いのだ。殺されたジャマル・カショギ記者の元婚約者が「プレミアリーグとイギリスという国家を著しく汚すことになる」と語るなど、プレミアリーグ参入には否定的な声があり、ニューカッスル買収はイメージアップのための政治的戦略との見方もある。
桁違いのマネーを携えてやってくるサウジの皇太子は、プレミアリーグに、ヨーロッパ・サッカー界に、なにをもたらすことになるのだろか。