渡邉 仙台が3バックでやっていたときも、ビルドアップのときにボランチが1枚下がって後ろを4にしたほうがいいのか、それとも3のままでやるかの判断は求めていました。分かりやすくいえば、相手フォワードが何枚で来るかっていう部分で、変えていました。その部分で、戦術的な間違いが少ない選手がいると心強い。どの程度開いたほうがいいのか、あるいは、どのくらい前に行けるのかを、ピッチで察知してくれる。
岩本 ビルドアップでルールってあったの?
渡邉 ありました。簡単にいえば、相手を“1層”ずつはがしていこうということですよね。相手が4-4-2で守ってれば、一番前の2をまずどうやって「切る」か。僕らは「切る」っていう言い方をしたんだけど、その2枚をようは置いていく。この2枚をどこで切れるの、誰が切れるの、そのためにどこにポジションとってなきゃいけないよねって、確認していました。この2を切れば、次の層、つまり、相手の中盤の4のラインを切っていきましょう。で、そのためにどこにポジション取っとかなきゃいけないのっていうのがあって。
でも最終的には、相手の最終ラインを破らなきゃいけない。それが、外からなのか、それとも中からなのかっていう作業。だからそこの決まりというかトレーニングはけっこうやってましたね。もちろん真ん中でくさびを打てればいいんだけど、それが難しいときは、サイドから一層ずつ切っていく。相手のペナルティボックスの「脇」をとる練習っていうのは、人形を置いたり、コーチがディフェンス役になって、繰り返しやってました。
岩本 スカパーの解説で行ったときかな。
渡邉 それで、「こういうことだろ?」って、それも一瞬で理解した。
岩本 あれは、少し前のビジャレアルのやり方と一緒なんだよ。マルセリーノ・ガルシア監督(2013-2016シーズンの監督)の4-4-2は、そのとき、多分世界一すごいと思う。現地に練習を見に行ったら、“練習の練習”っぽいことをしているんだよね。この練習は何のためにするのか、みたいな。
一方で、Jの練習を回ってみていると、何の練習なのか、選手が分からずにやっていることって珍しくないんだよね。ナベ監督の練習も見ているけど、試合のイメージを持ちながらやっているでしょ? その感覚がないと、練習ってただボールを蹴っているだけの時間になってしまうんだよ。どうやって蹴るんだろう、こうやっても蹴れるな、っていう時間。レアルなんか、練習で球回しをやっていても、それがそのまま試合と同じなんだよね。相手がいて、自分たちがどう動きたいから、こう球を回す、そのためにこういうボールを蹴る、みたいな。 ビジャレアルに話を戻すと、あの監督は本当に細かいしうるさい。そして、印象に残っているのが、シュートを外したらとにかく怒りまくるの。「このやろーッッ!!!」どころじゃないから。俺が名古屋グランパスにいたときに、ネルシーニョ監督もそうだったね。“こんなにキレる⁉”ってくらい、怒鳴られたから。選手のときは“なんだよ”って思ったけど、今は、外国人監督はそこの厳しさを分かってるのかなって思うようになったね。シュートに行くまでに、みんながしっかりルールを守って攻撃を作っているわけだから、シュートを外すってことは、それをすべて無にするっていうことだからね。そして、その1点で人生が変わる可能性もあるわけだから。渡邉 その話も、練習を見たときに言ってたよね。「取材対応が終わったら、ちょっと待ってて。あとで上に行くから」って。そして、マグネットを使って、ビジャレアルとの共通点なんかを教えてもらった(笑)。
岩本 ビジャレアルとちょっと違かったのは、仙台のは、ボランチとかサイドバックからのサイドチェンジ。ビジャレアルは、相手を寄せてからスパーンと入れるんだよね。相手が寄せればそれで局面を変えるし、それを恐れて寄せが弱くなればそのまま前進する。サイドチェンジがとにかく早くて正確だからできるよね。
渡邉 その辺って、スペインはうまいよね。
岩本 すっごいうまいよ。それにさっきも言ったけど、それも試合を想定した練習でやっているから。試合中はほんとそればっか。だから面白いんだよ。
渡邉 このタイミングで、そういうのを一回見てみるのもありかな。
※3回目は近日更新。