――去年の仙台は、ボランチの構成として選手の組み合わせがいくつか考えられました。監督にとって選手構成はとても重要なことだと思いますが、攻撃・守備を1枚ずつ置きたいみたいな意図などはあったんですか?

渡邉  別に、攻撃的・守備的でボランチを1枚ずつ置くっていう考えは、僕の中ではそんなになくて。理想を言えば、しっかりとボールを取りにいくし、なおかつ、自分達がボールを握って相手を圧倒したい。だから、守備ができて、そのボールをしっかり配れる選手を置きたいのが本当は理想。

――ボールを握りたいということでいえば、「5レーン」という言葉は、渡邉監督の代名詞のようにもなっています。

渡邉  僕、「5レーン」って言葉自体は言ったことがないんだよね。

  ただ、3バックに1トップ2シャドーの形で戦うにあたって、キャンプでコンビネーション高めるトレーニングをずっとしてたんですね。その中で、3対3の形から始まって、くさびを入れたコンビネーションで崩そうっていうのをやっていた。ただそのときに、くさびのボールが入ったときにどうしても選手がガチャガチャと重なってしまうことが多かった。その重なりのせいで、その後の攻撃がうまくいかないということになったんです。それでコーチ陣で「これ、どうする?」って話し合ったんです。そのときに、「じゃあ、ピッチをいくつかの線で区切っちゃおう」と。そして、選手には「一発目のくさびが入るまでは、この選手とこの選手は入ってくるな」「この選手はこのタイミングでここにいれくれ」といくつかの約束事を決めたんです。その約束事があると、「くさびが入ったあとにワンタッチでこっちに弾けるぞ」とか、「ここでもう1回受け取ることができる」と説明しました(実際にはテーブルのコップなどを動かして時間をかけて説明)。  1トップ2シャドーでその動きや立ち位置が決まれば、3バックの仙台の場合は外にウイングバックがいますから、それを組み合わせれば、みなさんの言う5レーンみたいなものになる。

岩本  ナベ監督が今言った、くさびを入れたときのガチャガチャって、Jの選手ってけっこうやりがちなんだよね。その動きって、相手センターバックからしたら、すごく取りやすい。だって、絞ってるところに………、賢い選手はその逆手を取ってここでこういうくさびを………、そうするとここでフリーで………(熱烈戦術論が展開)。

渡邉  テル君が言うように、ここでフリックして逃げれると一気に………(同上)。

岩本 それプラス、サイドバックを今度はこう………(同上)。

(編集部注:2人の戦術論がしばらく続きました。この内容を通常の対談で紹介するのは困難なので、いつか別の形でご紹介したいと思います。この説明で、本誌編集者が去年の仙台のサッカーで機能不全だと感じていた部分も、何がしたくて、実際に何ができなかったのかがとても明瞭になりました)

岩本  こういうボールの動かし方とかはがし方って、コンサドーレ札幌はうまいですよ。Jだとミシャ(ペトロビッチ・コンサドーレ札幌監督)のチームはスムーズ。ただ、これがヨーロッパだと、みんなできてるよね。特にスペインなんかは自然にできてる感じがする。相手の陣形によっても自然と対応できてることが多いよね。

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