サッカーライン
緑のピッチに整然と引かれた白いライン。その美しさは類を見ない。
サッカーは無数のディテールであふれている。重箱の隅をつつくような、コーナーエリアを巡る連載コラム。今回は大住さんの愛してやまない、美しいサッカーグラウンドについてのウルトラマニアックなお話を……。

この世の中で最も美しいデザイン

「サッカーグラウンドのラインとトイレットペーパー、どっちが幅広?」

 割と有名な「サッカートリビア」のひとつである。

 サッカーグラウンドのラインの幅は、実は12センチもある。

 ルール第1条に「すべてのラインの幅は同じで、12cmを超えてはならない」と規定されており、さらに「ゴールラインの幅はゴールポストおよびクロスバーの厚さと同じでなければならない」とある。その「ゴールポストとクロスバー」は、同じく第1条で「白色で、同じ幅と同じ厚さで、12cm以下とする」。ラインの幅はどうにでも調整がきくが、ゴールはおいそれとはつくれない。自然、ゴールポストとクロスバーは、例外なく12センチとなり、自動的にラインも12センチということになる。

 そしてトイレットペーパーの幅は、日本では11.4センチが標準。サッカーのラインのほうが幅広いということになるのだ。

選手の動きの美しさを演出するのが真っ白なラインだ。
選手の動きの美しさを演出するのが真っ白なラインだ。
ラインの美しさが試合の美しさを引き立てる。
ラインの美しさが試合の美しさを引き立てる。

 サッカーグラウンドのラインは、この世の中で最も美しいデザインのひとつではないかと、私は考えている。緑のじゅうたんのような芝生の上に引かれた真っ白な直線と円形、あるいは円弧の組み合わせは、不必要なものがなく、また、シンプルでいて何も付け足す必要がない。

 サッカーグラウンドのマーキング(ライン)の規格は1902年にはほぼ完成し、35年後の1937年に「ペナルティーアーク」が付け加えられて以来、83年間まったく付け足しも変更も行われていない。この事実を知れば、その「完成度」の高さが理解できようというものだ(コーナーアークからの9.15メートルの目印もテクニカルエリアも任意である)。

サッカーのラインはもう83年間も変わっていない。
サッカーのラインはもう83年間も変わっていない。
ゴール裏から見ると、また違った美しさがある。
ゴール裏から見ると、また違った美しさがある。

 試合前、ウォーミングアップが始まる前、スタンドの記者席に座ると、私はまずピッチを見る。縦105メートル×横68メートルの緑輝くピッチとそこに引かれた真っ白なラインをしばらくうっとりと見つめてしまう私は、もしかすると「変態」だろうか。いや、サッカーグラウンドの美しさについては、誰でも賛同してくれるに違いないと、私は信じている。

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