大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第196回「20世紀最高の試合」(1)屈辱の3-6大敗劇、世界最強のアマチュアチームに10万人が絶句の画像
日本代表もピッチに立ったウェンブリー。旧スタジアムは、20世紀最高の試合の舞台となった。撮影/渡辺航滋(Sony αⅡ使用)
 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、ウェンブリーが魔法に包まれた日…。

■五輪王者にも無関心だったイングランド

 サッカーは世界の隅々にまで広がった競技であり、世界の多くの国で圧倒的な人気を博している。しかし世界をかけめぐる「情報」には著しい偏りがある。長い間、日本のサッカーファンにとっての世界のサッカー情報は、英語圏からもたらされたものだった。あるいは、日本のサッカーに関係の深い国の言葉によるものだった。

 1960年代までは英語圏が圧倒的だった。最初は英国の書籍を通じて、次には雑誌やテレビ(ダイヤモンドサッカー)を通じて、イングランドのサッカーの情報、マンチェスター・ユナイテッドやジョージ・ベストの情報が、ファンの目に触れるようになった。1970年代にはブラジルや西ドイツの情報が入るようになり、日本のサッカーファンの世界は少し広がった。1980年代にはイタリアからの情報も増えた。

 しかし21世紀も4分の1を過ぎた現在に至っても、基本的な「偏り」はなくなっていない。今年のワールドカップでセンセーションとなったカーボベルデなどは、いったいどこにあるのか、どんな国なのか、そしてそこではどんなサッカーが行われているかなど、私を含め、これまでほとんど知識も関心もなかっただろう。

 さて、「圧倒的な情報発信力」を誇る英国(イングランド)からの話題に、「世紀の試合」がある。まあ「20世紀最高の試合」とでも解釈しておこう。彼らの言うその試合とは、1953年11月25日(水)にロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われた国際親善試合、イングランド×ハンガリー。イングランドが3-6で撃破された試合である。

「サッカーの母国」であるイングランドと1952年ヘルシンキ・オリンピックの金メダリストであるハンガリーの対戦。しかし当時のオリンピックは「アマチュア」の大会であり、イングランドではサッカー競技はほとんど関心を持たれていなかった。英国もイングランドを中心にしたアマチュア選手でチームを編成して出場したものの、1回戦に先立つ「予備戦」で1-1から延長の末、ルクセンブルクに3-5で敗れており(!)、そのオリンピックでチャンピオンになったハンガリーに対する興味は薄かった。

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