■炭鉱の街の衰退を越えて。村の人口を上回る「1万4221人の会員」が支える奇跡のクラブ

 ドイツ南西部、フランスと国境を接するザールラントは、19世紀に炭坑によって栄え、その後、鉄鋼業が盛んになった。この時期にシュピーゼン・エルバースベルクの村も人口が増えた。しかし第一次世界大戦(1914~18年)後には15年間にわたってフランス領となり、1935年にドイツに復帰したが、第二次世界大戦(1939~45年)後、フランスはザールラントを「保護領」として1956年まで支配した。この時期、ザールラントは独自に国際サッカー連盟(FIFA)加盟を果たし、1954年ワールドカップ・スイス大会の予選にも出場している。

 1956年にドイツ(当時の西ドイツ)に復帰したが、石炭産業だけでなく鉄鋼業の衰退により長い経済不振が続いていた。そのなかにあって、ウルザファルムは従業員を毎年100人ずつ増やすなど、この州の経済のなかで大きな存在になりつつある。

 そしてSVエルバースベルクも、今年のブンデスリーガ1部昇格によりクラブ会員数でザールラント州の名門1.FCザールブリュッケンを抜き、一躍地域の「エース」に昇り詰めた。現在のスタジアム収容数1万人だけでなく、村の人口1万3000人をも上回る1万4221人が、今季、クラブの会員資格を持っている。

「小さな村の奇跡」は、ピッチの中だけでなく、地域全般に及ぼうとしている。

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