■ 鎌田大地が語っていた「強豪相手の戦い方」
試合前日、鎌田大地は「強豪相手でもしっかり怖がらずにやることが大事」と語っていた。そして、こう話した。
「相手のプレスのかけ方を見ながら、自分たちが数的優位だったら、ある程度ポゼッションをしないと、ずっと相手にボールを持たれてしまう。一方、相手が前から来たら、ワンタッチをうまく使って前に行けば一気にマークを剥がしてチャンスになる。自分たちができるプレーをするのが大事なのかなと思ってます」
日本は、鎌田の言葉通りのプレーをした。極端に引いて守るわけでもなく、かといって無理に前へ出て間延びするわけでもない。陣形はコンパクトに保たれ、ボールを奪った後の攻撃は鋭かった。イングランドに圧倒されている様子はまるではなく、むしろ自分たちのペースに引きずり込んでいた。
その象徴は、日本の得点だろう。
三笘薫が中盤まで下がってボールを奪い、鎌田、上田綺世を経由しながらカウンターを発動する。左サイドに通した三笘のパスは美しく、中村敬斗がクロスを入れるタイミングも的確だった。そして、ゴール前に走り込んだ三笘が、インサイドで冷静に流し込んだ。判断と技術の積み重ねで完成したゴールに、英紙タイムズは「お手本のような得点」と絶賛した。
さらに同紙は、日本代表について「青いユニフォームの戦士たちは”水のように”一体となって動いた」と表現した。その通りだったと思う。攻守の切り替え、中盤の構成と進め方。そのどれを取っても、日本のほうがイングランドよりも「ひとつのチーム」として機能していた。
もちろん、イングランドにエクスキューズがなかったわけではない。軽度のケガで大事を取ったハリー・ケインの欠場によりイングランドはパワーダウンを強いられた。「ケインがいなければ別のチーム」とよく言われるが、この日のイングランドはまさにそのとおりだった。ブカヨ・サカ、ジュード・ベリンガム、デクラン・ライスらを欠いたチームが本来の姿ではないことも確かだ。
またトーマス・トゥヘル監督が、4−2−2−2の変則布陣をテストしたことも響いた。モーガン・ロジャーズとアンソニー・ゴードンを前線に置きながらも、2人のアタッカーは中央に残らずワイドな位置取りでプレー。さらに、MFのフィル・フォーデンとコール・パーマーが中盤と前線を行き来するという「ゼロトップ」で日本を揺さぶろうとした。
だが、その試みはほとんど機能しなかった。前半の枠内シュート数はゼロ。強化試合の前半でイングランドが枠内シュートゼロに終わったのは、約9年前、2017年のドイツ戦以来の惨事だ。イングランドほどのタレントを揃えたチームが、ここまで明確に攻撃の手がかりを失うのは珍しい。
ただ、こうした試合展開はイングランドが悪かったからだけではない。日本が安定していたからだ。
相手が前線の立ち位置を変えて揺さぶろうとしても、日本の最終ラインは乱れなかった。誰が食いつき、誰が後ろを埋めるのか。どこで前向きに奪いに行き、どこで我慢するのか。その判断が共有されていた。
こういう部分は、実のところクラブレベルでも簡単ではない。代表チームは活動時間が限られ、細部を詰める時間が少ない。それでもこの日の日本には、日々ともに戦っているクラブのような安定感があった。
代表とクラブサッカーを同じ土俵で語ることには乱暴さが伴うが、連携と連動という一点に限って言えば、この日の日本代表はプレミアリーグの中でも上位クラスに相当する完成度を見せていたと言っていい。個の能力で強引に局面をひっくり返すチームはプレミアにいくらでもあるが、組織全体が同じイメージを共有しながら90分を進めるチームは、実はそれほど多くない。その意味で、日本の強みはやはり組織力にあるのは間違いない。
つづく


















