後藤健生の「蹴球放浪記」第287回「鰻屋でフグを注文する?」の巻(2)インド料理屋で注文しても「出てこない」ナン、中華料理店で飲もうとしても「メニューにない」紹興酒の画像
イングランドで開かれたEURO96の入場券。提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生は「食の世界」も放浪する。世界三大料理のひとつ「中華料理」のフィールドを放浪し、その奥深さに気づかされたのは、サッカー欧州選手権が開催されたイングランドでのことだった!

■「中国語」は存在しない?

 中国語という言語にしても、標準語(普通話)は北京語をもとにしていますが、その他、各地に別個の言語が存在し、それぞれ発音も単語も異なっており、文字を書かないと通じ合わないのです。台湾の地下鉄の車内アナウンスでは駅名を普通話のほか、広東語、福建語、客家語でアナウンスしています。

 それぞれは、たとえば英語とドイツ語、ルーマニア語とイタリア語ほど違っているのです。

 だから「中華料理」というものも実際にはないのです。あるのは、広東料理、福建料理、上海料理、北京料理などなど各地の独特の料理。そして、全体を便宜的に「中華料理」と呼んでいるだけなのです。

 フランス料理とイタリア料理、スペイン料理、ドイツ料理にハンガリー料理、ロシア料理などはまったく違う料理なのですが、それをまとめて「ヨーロッパ料理」と呼んでいるのと同じなわけです。

 イタリア料理店に行って、「ボルシチ」を注文しても、絶対に断られることでしょう。

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