後藤健生の「蹴球放浪記」第276回「フェンウェイ・パークの歓声を聞きながら」の巻(1)大谷翔平「38号ホームラン」で思い出すマラドーナ復活「アメリカW杯」の画像
1994年アメリカW杯、アルゼンチン対ナイジェリアの入場券。アルゼンチンの英雄マラドーナが復活するも…。提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生は、サッカー以外のスポーツを観戦することもある。最近の日課は、日本人のコンプレックスを吹き飛ばしてくれた「二刀流」の活躍。彼の「38号ホームラン」を見て思い出すのは、悲劇のヒーロー、ロベルト・バッジョが活躍した1994年アメリカW杯。当時の現地取材でかなえられなかった「宿願」を、来年の北中米W杯ではかなえたいという!

■アジア人の「トラウマ」を克服

 毎朝、アメリカ・メジャーリーグ(MLB)の大谷翔平の試合を見るのが、なかば日課となっています。

 サッカーの中継と違って一所懸命に見ている必要がありませんし、野球というスポーツの特性としてチラチラと要所だけを見ているだけでも試合の流れが分かるので、朝に用事をしながら眺めているのにはちょうどいいのです。

 大谷が活躍してくれれば、その日のエネルギーにもなります。

 なにしろ、19世紀のなかばにヨーロッパ生まれの近代スポーツが日本(アジア)に伝わってきて以来、日本人(アジア人)は「フィジカル能力では敵わない」という前提に立って、1世紀半にわたって世界と戦ってきたのです。

 体重別の競技では軽量級に活路を見いだし、フィジカル勝負を避けるためにテクニックを使い、戦術を駆使して世界に対抗してきました。「柔よく剛を制する」なんていう言葉も好まれました。

 しかし、大谷翔平という選手はMLBの中でフィジカル面でも優位に立てているのです。

 アジア人が長い間、抱えて続けてきたトラウマを、ついに克服してみせたわけです。そういう意味でも、大谷の活躍はわれわれの胸のつかえを取り去ってくれるように感じます。

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