■エッフェル塔の「シュート」が凱旋門に

 スペインからの移住者を両親に持ってアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれ、絵画を学び、ジャーナリスト養成学校でイラストレーターの資格を得た。黎明期の子ども向けアニメーション映画にかかわり、ペルーのリマに移ってフリーランスの広告イラストレーターとなる。アメリカのカード会社「ホールマーク」での仕事を認められてアメリカに渡り、「ポパイ」のアニメ映画化にも参加した。

 1963年にはパリに拠点を移し、欧州のさまざまな雑誌にイラストを寄稿するようになる。大きな鼻を持った人物や、ユーモラスな姿をしたさまざまな動物を入れたカラフルなサッカーのイラストは、世界的な人気を博した。

 モルディージョのサッカーイラストは、想像力のかたまりだ。25ものビル(間には道がある)の屋上をつないだピッチでのサッカー、エッフェル塔がシュートしたボールが凱旋(がいせん)門のゴールに飛び込むものなど、見て飽きることがない。もちろん、たくさんのイラスト集や絵はがきも売られている。

 日本のサッカー漫画も世界のカートゥーンも、サッカーというシンプルな競技が人々に与える知的な刺激の大きさがモチベーションとなっている。シンプルなゲームながら、その知的な刺激が途絶えることがないのが、サッカーという競技の不思議さ、最大の魅力なのかもしれない。

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