■現行ルールはなぜ「死文化」したのか

 そもそも、2000年のルール改正の際にGKは6秒以上ボールを保持してはいけないと決められた。しかし、その罰則が反則が起きた地点(GKのボール保持が6秒を超えた地点)からの「間接FK」だったため、最初は神経質だったレフェリーたちもすぐに「寛容」な態度を取るようになった。

 GKが手でボールを持っているのだから、当然、ペナルティーエリア内である。ペナルティーエリア内からの間接FKのマネジメントは、レフェリーにとって非常に難しい。また、「時間の浪費」という行為に対する罰則としては、失点になる恐れが高いペナルティーエリア内からの間接FKは不当に重い罰と考える人も多かった。その結果、「6秒ルール」は、このルールが存在して四半世紀の間、世界のどこでもほとんど実施されたことのない「死文」となっていたのだ。

 しかし、レフェリーのそうした態度につけこみ、GKたちは好き勝手にボールを保持するようになった。IFABが調査したところ、20秒以上保持していたGKもいたという。

 日本でも多くのGKコーチたちが、リードしている試合の終盤などでは、正面にきた何でもないボールをキャッチした後、そのまま前に倒れ込んでしばらく立ち上がらず、「時間を使う」ことを指導している。GKたちはその教えをしっかり守り、勝利のためにやっているのだろうが、私には、サッカーで最もみっともない行為のひとつにしか見えない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3