■チームが伸びていくうえでの「前進」

「国破れて山河あり」という故事がある。中国・唐代の詩人・杜甫(712~770年)が安禄山の乱で破壊された都・長安をうたった詩「春望」の冒頭に出てくる言葉である。「城春にして草木深し」と続く。この日の日本代表なら、「コンビネーション破れて個人技あり」といったところだろうか。

 バーレーン戦の日本代表は、彼我のコンディション差により、これまでの6試合で相手を圧倒してきたコンビネーション攻撃を繰り出すことはできなかった。だが、それを監督も選手も受け入れ、集中を切らさずに戦った。そして、その中で個人で相手の守備を打開し、2つの得点まで生んだ久保という選手を擁していたことが貴重な勝利を生んだのだ。もちろん鎌田大地の「超絶シュートテクニック」も苦しむチームを救った。チームが伸びていくうえで、そうした勝利も大きな「前進」と言えるのではないか。

 苦しい試合で、ファンが期待した圧倒的なコンビネーション攻撃は出なかった。しかし、これもまた、森保監督にとって「会心の試合」だったことを納得した。

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