
J2の藤枝MYFCが、まさに劇的な今季初勝利を飾った。食中毒で多くの選手を欠くハンディをはね返し、しかも逆転を呼び込むゴールはゴラッソとあり、目にした人に感動を広げている。
藤枝がピンチに陥った。J2第3節開催の前日、クラブの公式ホームページで食中毒の発生を報告したのだ。
「重要なお知らせ」と題した報告によると、2月26日から27日にかけて、トップチームの選手とスタッフが集団食中毒を発症したという。下痢や嘔吐などの症状があったといい、その総数は実に25人に上った。
報告翌日には、ブラウブリッツ秋田とのホームゲームを控えていた。まずは開催の可否の判断が必要だったはずで、クラブは発症した全員が受診し、保健所への報告などを行った上で、試合の開催を決定。強い決意を持って、試合へと臨んでいた。
J2昇格3年目となる今季の藤枝は、開幕戦をホームで落とし、第2節は昇格組のFC今治と引き分け、まだ勝利を手にしていなかった。いわば、ピッチ上での苦しい状況に、ピッチ外の苦労が重なった格好だった。
今節も、秋田に先制を許す苦しい展開でゲームが進んだ。食中毒の影響か、先発の選手は前節から6人も顔ぶれが変わっており、さらに苦しい状況に追い込まれていた。
だが、前半終了間際には浅倉廉のゴールで試合を振り出しに戻した。試合はそのままイーブンの状態で進んでいったが、今度は後半終了間際にドラマチックなシーンがやってきた。
主役となったのは、前田翔茉だ。大卒3年目の選手で、前節まではベンチを温めたまま試合を終えていた。
先発に抜擢された前田が、ゴラッソで応えた。後半43分、CKのこぼれ球に、まさに鋭く反応した。ペナルティーエリア外から走り込んできた前田は、まったく迷う様子を見せずに右足で合わせる。レーザービームのような一撃は、ゴール前に居並ぶ両チームの選手の間を抜け、ゴール左隅を射抜いた。