サッカー取材に欠かせないものがある。旅先で、しっかりと栄養を摂ることだ。蹴球放浪家・後藤健生にとっては、食事はただの栄養補給ではない。その土地や国そのもの、そして文化を教えてくれるものなのだ。
■「ぜひ食べたい」フランス南部の料理
ワールドカップのときのメディアセンターの食事なんて、そんなものなのですが、さすが、フランスは美食の国だけのことはありました。
それなりのメニューが揃っていたのです。
たとえば、フランス・ワールドカップで日本が初戦を戦った南部のトゥールーズ。ここのメディアセンターには「カスレー」というメニューがありました。
フランス南部の料理で、各地に独特のカスレーがあります。大きなソーセージと豆類を煮込んだような料理です。
僕は、まだこれを食べたことがなくて、「トゥールーズに行ったときにはぜひ食べよう」とは思っていたのですが、ワールドカップ初出場というのでメディアも盛り上がっていて、毎日のように原稿を書く仕事や、放送関係の仕事がありました。
しかも、グループリーグの間は毎日TGV(高速鉄道)に乗って移動の連続です。アルゼンチン戦の前日にはリヨンで韓国対メキシコ戦を観戦。アルゼンチン戦の翌日も、リヨンに戻ってコロンビア対ルーマニアがあります。
つまり、レストランに行っている時間なんかなかったのです(カタール大会の良かったのは、1日に2試合ずつ観戦しながら、さらにレストランに立ち寄る時間があったことでした)。