■年齢に関係なく高め合う姿

「自分はミーティングでも勝利への意欲を押し出しているんですが、ヤス(遠藤康)なんかは『ゴリさん、話が長いです』と少し斜め目線で言ってきます(苦笑)。そういう冷静なスタンスを持つベテラン選手がいることも大事ですね。

 逆に林(彰洋)なんかはミーティングの時に一番前に来て、僕の話を聞きながら頷いています。目の輝きを見るとこっちもモチベーションが高まります。いろんな選手のパッションがあって、変化のスピードも一気に加速したと感じます」

 練習を見ていても、選手たちは緊張感をもって、時に厳しく要求しあっているという。今の若い世代はお互いの主張をぶつけ合うことは少なくなったと言われるが、仙台はベテラン、中堅、若手が年齢に関係なく高め合おうとしているようだ。

「僕は長く育成に携わってきたので、16~17歳の変化のスピードの速さを間近で見てきました。10代の若手に比べると大人の選手はなかなか変わらないものですが、今の仙台のメンバーは少しずつ変わっていると思います。

 1つできたと思っても、またすぐできなくなることがよくありますけど、そういう課題に対して繰り返し取り組む姿勢も顕著になっている。個々の向上心、1つの大きな目標を達成したいという思いは育成年代と何ら変わりませんし、ホントに素晴らしいなと感じる。僕自身も8カ月、ここで仕事をして、大きな手ごたえを感じています」

 森山監督が言うように、チームにいる全員がお互いの特徴を認め、伸ばそうと切磋琢磨しあう集団というのは確実に強くなる。今の仙台にはそういった雰囲気が感じられる。ただ、それを本当にJ1昇格につなげられるかどうかはここからの戦い次第。特に過酷な夏場をどう制するか。そこが大きなポイントになるだろう。

【もりやま・よしろう】
1967年11月9日生まれ、熊本県出身。現役時代はサンフレッチェ広島などでプレーし、サッカー日本代表としてもキャップ数を重ねる。引退後は指導者の道を歩み、サンフレッチェ広島ユースでコーチと監督を歴任。その後、日本サッカー協会で育成年代の監督を務め、U―17日本代表監督としてFIFA U―17ワールドカップに出場した。今季からベガルタ仙台の監督を務める。

※記事内のデータはすべて8月9日執筆時点

(取材・文/元川悦子)

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(6)へ続く
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