■VARが使われる試合では「緑色のシューズ」

 この試合のVARはフランスのジェローム・ブリサール、アシスタントVAR(AVAR)はカタールのハミス・アルマッリである。2人が映像をチェックする中で、藤田のパスの瞬間に、細谷の足がわずかに出ているのではないかという疑いが沸いた。そして静止映像を見ると、マークするスペインDFパウ・クバルシを抑えようと踏ん張った右足かかとが、わずかにクバルシの右足つま先より前に出ていたのだ。
 だが体勢としては、細谷とゴールの間には完全にクバルシの体があった。オフサイドというルールの精神からすれば、完全に「オンサイド」の状況である。VARというシステムを作ったのは、こんなに美しいゴールを無にするようなことをするためではなかったはずだ…。
 細谷のシュートが決まったのが、時計では39分42秒。VARの確認を経てベイダ主審がオフサイドを宣告したのが42分50秒。「3D」が必要でもないシチュエーションでこれほど時間がかったのは、VARにその葛藤があったためではないか。
 細谷のシューズが白かったのもいけなかったかもしれない。最初にAVARの目を引いたのは、この「白」だったはずだからだ。VARが使われる試合では、FWは芝生と同じ緑色のシューズをはくべきだなどと、悔しまぎれに思ってしまうのである。
 サッカーは「ifとbutのゲーム」だと言われる。試合には無数の「ifとbut」がある。しかし、このゴールが認められていれば、試合は大きく違ったのではないかという思いは消し去ることができない。

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