相手DF3人がいても「無人の荒野を行くがごとし」

「後ろ4人、前3人のヴェルディ選手に挟まれた、前線のブライアン・フィアベマ選手にボールを当てると、フィアベマ選手のヒールキックは最終ラインに弾き返されてしまうんですが、久保選手がボールを巧みに拾ってヴェルディ選手3人に囲まれながら、ドリブルで切り込んでマイナスのパス。

 パスは味方選手に届く寸前、クリアされてしまいましたが、若手の相手DF3人が寄せてきても、まるで無人の荒野を行くかのよう。173センチと小柄ながら、フィジカルでもまったく負けてなかった。違いを見せつけましたね」(同)
 その久保の躍進を支えているのは、実力はもちろんだが、幼少期からバルセロナなど、スペインで暮らしたことが大きいのではないかと渡辺カメラマンは分析する。
「もちろん、伊東純也選手のように、語学力に頼らなくてもすごい選手はいますが、久保選手の場合、身についている完璧な語学力もあって、味方選手とのコミュニケーションが本当にスムーズでした。間違いなく、チームの主力であることが分かりましたね」(前同)
 スタジアムに集まった4万人の人々とテレビの前で見守るファンに、違いを見せつけた久保。だが、後半3分、交代することになり、早すぎる主役の退場にスタジアム全体からため息が漏れたが、やがて拍手に代わり、次第に大きくなっていった。
 試合は2-0でソシエダの勝利に終わったが、そんな日本が誇るヒーローとともに、国立競技場を沸かせたものが、もうひとつあった。

正確なキックで味方のチャンスを演出する久保。撮影/渡辺航滋(Sony α‐1)
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