■選手を乗せていった一体感
先制した川崎だったが、ここ数試合でそうだったようにこの試合でも追いつかれてしまう。宇佐美貴史のキックに中谷進之介が合わせる形で同点弾を献上。前半のいい流れの中でリードを広げたかったが、逆に追いつかれてしまう。
そして、宇佐美が「なかなかいい流れができない中で失点してしまって、ガクッとくるようなところでしたけど、前半のうちに追いつけたのは大きかった」と話すように、後半の情勢は違ったものとなる。
先述したように、ロッカールームでの“喝”もあって、G大阪がボールを意図して持てるようになる。また、川崎がうまく前進できなくなったことも要因としてある。DF陣と橘田健人の間のパスコースを坂本 一彩らが寸断。橘田自身、「(坂本が)自分のところに立ったりとか、(相手の)ボランチが自分のところに出てきたりとか、ケアをしてきていた」と振り返り、「そこを動かすような、自分のところから離れないといけないような状況っていうのをチームとして作っていく必要があります」と悔やんだ。
そうしてG大阪がリズムをつかむ中で、後半25分に福岡将太が逆転弾を決める。結果的には、これが決勝ゴールとなった。この日のマッチデーブログラムに、「サポーターに勝利を届けたい」と気持ちを綴っていた福岡が、プロ11年目でのJ1初ゴールで有言実行をしてみせた。
ただし、福岡はこの得点もチーム全体で取ったものだと謙虚な姿勢を崩さない。佐々木旭がマークについていたというが、半田陸がうまく対応してくれたことで決めることができたからだという。そして、そうした一体感の気持ちが、さらに残りの時間でG大阪の選手を乗せていった。ホームゲームという要因も大きければ、その得点がサポーターの前で取れたというのも大きかった。福岡自身、「サポーター側に向けて点を取れたことが嬉しい」と笑顔を見せているからだ。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)