■交代がゲームを変えた
そう齋藤が振り返る通り、大前提として東京Vの諦めない戦いぶり抜きに、この同点劇は語れない。それでも鹿島側に大きな問題がなければ起こり得ない結果であることも事実だろう。こうした試合結果について、記者の立場で選手たちの心理を全て読み解くことはできないので、取材から推察していくしかない。ここで判断材料として気になるのは日本代表のMF佐野海舟の言葉だ。
佐野は「3点目を決めた後までは良かったと思いますけど……相手に1点目を決められて、そこは自分のところで緩かったと思うし、気持ちを緩めてるわけではなかったですけど、周りから見ればそう思われても仕方がない」と振り返る。後半5分に名古新太郎のCKからDF植田直通が決めて、3−0としてすぐに鹿島のリズムが崩れた訳ではない。やはり明確にゲームの流れを変えるエッセンスになったのは両チームの交代策だった。
東京Vの城福浩監督は齋藤功佑をトップ下、ドリブル能力の高いチアゴ・アウベスを左サイドに同時投入。システムを4ー4ー2から4ー2ー3ー1に変更した。この意図について城福監督は「フィジカル的なものは鹿島は強いので、相手をより混乱させるものが何かというところで、フィジカル勝負をやめて、より相手を混乱させる選手を置いて、2、3列目から湧き出ていくような形にしたほうがわれわれらしい。鹿島の混乱を招くことができる」と振り返る。