■インドサッカー協会が出した「出場のための条件」
インドサッカー協会の公式的な「棄権理由」は、「出場経費をまかなうことができない」という経済的なものだった。しかし、これが「表向き」のものであることは明らかだった。すでに出場決定国からトルコとスコットランドが出場辞退を表明、FIFAはフランスとポルトガルに代替出場を要請したがポルトガルは拒否。16チームでの開催予定が15チームになっていた。これ以上出場国を減らしてはならないと、インドに対し、FIFAはブラジルまでの渡航費の負担を申し出ていたからだ。
そこでインドサッカー協会が出した「出場のための条件」が、「裸足でのプレーを認めること」だった。1948年にロンドンで開催されたオリンピックにインドが出場した。その大会で、インド選手の多くはサッカーシューズを履かず、「裸足」でプレーしていた。シューズを履いた選手と履かない選手が混在するのはケガの危険がある。そこでFIFAは、1950年2月15日のワールドカップ組織委員会の会議(パリ)で、大会出場の全選手にシューズの着用を義務づけたのである。
インドサッカー協会は、この規定の撤回を求めた。しかし、FIFAは拒否した。その結果、インドサッカー協会は最終的に棄権することを通知してきたのだ。