第2戦が中止となる衝撃の幕切れとなった、日本代表VS北朝鮮代表のワールドカップ2026アジア予選。開始早々の田中碧のゴールで勝ちを拾ったサムライブルーだが、今後、世界の強豪と戦ううえで、いくつもの課題が見つかったと、考えている人も多いのではないか? 本稿では、ゴールキーパーの「プレジャンプ」動作に着目したひとりで、現在、南葛SCユースのGKコーチを務める山野陽嗣氏に、日本代表の守護神である鈴木彩艶について話を聞いた。
■前半39分まで「ボールを手で触っていない」
ーーもし、鈴木選手のプレーの中でネガティブな点があれば教えてください。
山野 これはすごく細かいことで、ネガティブなプレーというほどではないんですが…。前半ほとんど鈴木選手はボールに触っていないんです。前半の39分くらいまでは、一回も手でボールを触る機会がありませんでした。
前半39分のプレーに注目してください。鈴木選手からのビルドアップの際に、右サイドの選手にミドルパスを出したんです。ちょっとズレて、高くて味方に合わずにサイドラインを越えます。そのキックミスから相手のスローインになって、その流れの中で日本の左サイドからクロスを上げられ、鈴木選手がキャッチした場面があったんです。キックがズレたことによって、結果的にボールを触る機会を得たんですが、そこから北朝鮮に少し押し込まれてしまったんです。つまり、なんでもないように見えるGKのワンプレーによって、試合の流れが変わってしまうことがあるんです。
鈴木選手のミスキックから、相手がプレッシャーをかけるようになったんです。
ビルドアップはGKだけじゃなくて、チームで協力して組み立てていくものなんですが、鈴木選手がプレスを掛けられてボールの出しどころがなくなり、蹴るしかなくなって彼からのロングボールが北朝鮮のGKに直接、渡ってしまう。
それまで日本はまったく危なげなくゲームを進めていたのに、鈴木選手のミドルパスが味方の選手に合わなくて相手ボールになってしまったことだけで、少し流れが変わったんです。こういうプレーは、GKが気をつけなければならないことです。これは、どんなGKでも起こりうることなんですが、GKの些細なワンプレーがゲームの流れを相手に与えてしまうかもしれないということを、あらためて考えさせられました。