サッカーの勢力図に、変化が起こるかもしれない。現在カタールで開催されているアジアカップで、東南アジア勢の奮闘が目立つのだ。潮流の変わり目に、サッカージャーナリスト大住良之が目を凝らす。
■タイの高いモチベーション
風が変わり始めたのは、2019年にUAEで開催されたアジアカップである。出場チーム数がそれまでの16から24へと一挙に増え、東南アジアからタイ、ベトナムの「2強」に加え、フィリピンが予選を突破して出場権を獲得、3チームが出場したのである。
そして初出場のフィリピンは3連敗でグループ最下位に終わったものの、タイは2位、ベトナムは3位でグループを突破した。ノックアウトステージでは、タイはラウンド16で中国に1-2と惜敗したが、ベトナムはヨルダンと1-1からPK戦4-2で勝ち上がり、準々決勝で日本に0-1で敗れた。そして今回は4チームが予選を突破して出場し、タイとインドネシアがラウンド16にコマを進めている。
タイを率いるのは、かつて鹿島アントラーズでJリーグ優勝を果たした石井正忠監督である。1勝1分け、勝点4で迎えた最終戦。負けても3位で突破できることは決まっていたこともあり、サウジアラビアを相手にした試合で、石井監督は大胆にも先発を11人入れ替えて臨んだ。しかし「サブ組」の11人はまったくひるまず、サウジアラビアに押されながらも果敢に守り、カウンターを仕掛けて互角に近い決定機をつくった。
「現在の自分たちの最大のターゲットは2026年のワールドカップに出場すること。そのため、このアジアカップでは、若い選手にチャンスを与え、チャレンジしてもらおうと思っている」
今大会のグループリーグ最終節、「アジアの巨人」のひとつと言っていいサウジアラビアと0-0で引き分けた後、石井監督は力むことなくそんな話をした。