■楽しみな遠藤の成長

 だが井原はそんなことまったく意に介していなかった。そして振り向いてチームを見渡すと、「きょうはこう戦うんだ」というような表情を見せた。ふだんは「おとなしい」とまで言われている井原の姿勢に、全選手が闘志をかきたてられた。

 この試合も勝ちきれなかったが、最終的にUAEを抜いて日本にイランとの決戦「ジョホールバル」への道を拓いたのは、試合終了直前、井原のロングボールをFWの呂比須ワグナーがヘッド、カズの動きに惑わされたウズベキスタンGKが触れることできず、そのままゴールに転がり込むという奇跡の同点ゴールで得られた勝点1だった。

 こうして歴代の日本代表キャプテンを見渡すだけでも、「キャプテンシー」の多彩さを見てとることができる。共通するのは、キャプテンたちはそれぞれの個性を生かし、自分自身の弱さと向き合いながらも「自分らしく」取り組んできたことだろうか。そしてその取り組みが、例外なく、全身全霊をかけたものであったことが、周囲を動かし、日本代表チームを成長させてきたのは間違いない。

 けっして簡単ではないアジアカップ制覇。この戦いを通じて最も楽しみなのは日本代表チームの成長だが、それとともに、自分自身の「キャプテン像」を築こうとしている遠藤航の「キャプテンとしての成長」にも注目していきたい。

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