■“お偉いさん”が自家用車で案内

 さらには、筆者の取材パスをどうやらパトゥム側で紛失してしまったという。通常、取材パスがなければ取材ができないどころかスタジアムに入ることすらできないのだが、その場にたまたま居合わせたスタッフ5人が、「ここにいる人はあなたの顔を覚えたから、もうどこに行っても大丈夫。好きに取材して」と、“微笑み”とともに“顔パス”を与えてくれたのだ。

“さすがにそれではどこかで捕まって時間を取られるな……”と思ったが、実際、最後まで誰かに“職務質問”されることなく、無事に取材することができた。この時ほど“微笑み”の強さを感じたことはない。

 川崎の今季のACLのアウェイ3試合を取材したのは基本的に3人。『エルゴラッソ』のT氏、フリーランスの江藤高志氏、そして筆者だ。JDT戦は『時事通信』の記者が日本から来ており、パトゥム戦では同通信社の現地記者が取材したが、それ以外の日本人取材者はいない。

 ミックスゾーンで取材した日本人は以上の3~4人がいるが、ピッチ横でカメラ撮影をした日本人は筆者だけ。そのため、3戦いずれの現場でも珍しがられ、いろいろと話しかけられたり、記念撮影を求められた(JDT戦では現地カメラマンがなぜか弟を連れて来て、3人で撮影をお願いされた)。特にパトゥム戦ではそれが強く、試合前後を通してタイ人カメラマンから水3本(3人から1本ずつ)とお菓子数個をもらった。

“微笑みの国”の優しさに驚いたが、前日練習の際にはタイサッカー協会の“お偉いさん”が、T氏、江藤氏、筆者をわざわざ自身の車に乗せてパトゥムのクラブハウスに連れて行って見せてくれるなどもしていただけに、常に驚きの中にいる感じだった。

(取材・文/中地拓也)

(3)へ続く
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