■「やられ方をちゃんと自分の中で整理しておかないと」

 鬼木監督は、10人についての戦い方についてこうも語る。

「10人になったときにより状況を把握して、選手の選び方とか戦い方を考える。やられるのはけっこうやられるじゃないですか、1人少ないんだから。でもそのやられ方をちゃんと自分の中で整理しておかないと。言い方は悪いですけど、このやられ方は大丈夫だけど、このやられ方はちょっと危ないなとか、そういうので考え方は多少変わるかな。あんまり深くは言えないですけど(笑)」

 サッカーは11対11のスポーツではあるが、その11人ではピッチ上をすべてカバーできないアンバランスな前提が、戦術としての深みや特徴を出す。そうである以上、1人であっても数的不利が起きれば、守備面で不安定になる。ピッチに立っている選手と相手選手の特徴や身体的能力を考えたうえで、どの不安定さを“選ぶ”かが大事になる。

 そしてこの試合、川崎は橘田健人の同点ゴールで見事に追いついて試合を終わらせた。天皇杯の決勝でタイトルを懸けて戦う相手に、良いイメージを持たせることは阻止してみせた。しかし、鬼木監督は試合後に選手に話したことがあるという。

「選手にも言いましたけど、10人で追いついたことは評価できるけれども、順番はそこじゃない。やっぱり11人いれば、逆転できてたかもしれないし。シーズンの途中でも言いましたけど、やっぱり基本はやっぱり11人でしっかりと最後まで戦えるところが大事だし、10人で追いついたからっていうことで、変な勘違いの満足をしちゃいけない。そこ(=追いついたこと)は評価をするけども、順番はやっぱり、11人で逆転まで持っていくっていうのが本来あるべき姿。そこは自分もやっぱり勘違いしないようにしなきゃいけない」

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