■心をとらえた限りない自由

 私がサッカーの楽しさに気づいたのは、中学生になってからだった。

 入学した中学は、高校までの6年制で、サッカーを「校技」のようにしていた。各学期末には、先生たちがテストの採点をしている期間に組対抗のスポーツ大会が開催され、入学後最初の大会で、私は「得意」と思い込んでいた卓球と、友人からの誘いに乗ってサッカーに出ることになった。

 夏休み入り直前、体育館で卓球をやった後、広いサッカーグラウンドでサッカーの試合に出場した。1964年の東京オリンピックを目前にしたこの時期、私にもサッカーという競技のイメージはあったが、私の「サッカー経験」と言えば、数年前の「ラインサッカー」だけ。ただボールを追って走っている間に試合は終わってしまったが、青空の下で思い切り走り回ることがこのうえなく心地よかった。

 そして何より私の心をとらえたのは、「限りない自由」だった。両手を後ろに組めなどとは誰も言わない。

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