■戦術的な勝利
そんな、好調同士の試合は、ホームの浦安の完勝に終わった。
両チームともスリーバックの対戦で、C新宿はボランチが最終ラインに下りることによってCBを攻撃に上げる、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督得意の「ミシャ流」のようなサッカーをするのだが、浦安がそれを読み切って戦術的にすべて蓋をしてしまった。
そのため、C新宿は攻め手を失い、90分間にわたって浦安がゲームをコントロールし続けたのである。
試合後、浦安の都並敏史監督も完勝にご満悦の表情だった。戦術的に相手を封じ込めたのだから、これは指導者冥利というものだっただろう。
ただ、90分にわたって優位に試合を進めたにも関わらず、浦安は58分に左サイドから村越健太が上げたクロスがそのままゴールに飛び込んだ1ゴールだけに終わった。
もちろん、サッカーという競技の性質上、いくら完璧な試合でも点が入らないことはよくあることだ。
だが、浦安は決定機そのものが少なかった。シュート数も10本に留まった。
戦術的に相手の攻撃を完封しただけでなく、奪ったボールもきちんとつなぎ、攻撃面でも非常に理にかなった試合をした浦安なのだが、無理をしてでも決めに行こうという積極性に欠けていた。シュートを撃てそうな体勢でもパスを選択してしまう場面もあった。
勝利数を増やして、さらに上位を目指すにはそうした「強引さ」のようなものが必要なのではないか……。浦安の快勝劇を見ながら、そんなことを感じていたのだ。
そんな試合を見た後に、多少精度を欠くものの、とにかく攻守にアグレッシブな千葉のサッカーを見たので、余計に千葉のサッカーに対する印象が強かったのかもしれない。
J2リーグとJFLでは、もちろん、試合のレベルには差がある。とくにプレー強度には大きな差がある。
だが、「サッカーの本質」は、どんなカテゴリーでも同じだ。
つまり、浦安のような論理的で冷静な戦術的な動きと、千葉が見せた「強引」ともいえるようなアグレッシブさ、この2つのバランスこそがサッカーというスポーツの難しいところなのだということだ。
ようやく猛暑から解放された9月下旬の土曜日、千葉県でまったく違うタイプの2試合を見て、僕はかなり満腹感を感じながら帰宅した。