サッカーの取材は、90分間が終われば完了するわけではない。ジャーナリストたちにとっては、スタジアムからの移動も仕事のうちである。蹴球放浪家・後藤健生は、ナイジェリアやオーストラリアの「深夜便」で、人々の生活に思いを馳せてきた。
■明と暗のコントラスト
現代の人類は膨大な量の化石燃料を使ってエネルギーを大量に消費しています。
国際宇宙ステーションから撮影した地球の画像を目にすることがよくありますが、夜間の写真ではいわゆる“先進国”や産油国一帯は夜中でも一面が黄色く輝いています。多くの都市、あるいはその都市と都市をつなぐ道路網などが照明で明るく照らし出されているからです。
朝鮮半島では、経済政策の失敗で貧困化してしまった「共和国」がある北半分は真っ暗ですが、経済発展が進み、GDPが今や世界第12位という経済大国になった大韓民国が存在する南半分は煌々と輝いています。
一方、海の上は基本的に真っ暗ですし(漁船の集魚灯などはかなりの明るさがありますが、あくまでもそれは「点」としての存在です)、貧しい“後進地域は”真っ暗で、ポツンポツンと都市の灯りだけが見えます。
そう、夜というのは本来は暗いものなのです。
そのことを実感したのは、1999年にワールドユース選手権取材のためにナイジェリアを訪れた時のことでした。
日本チームは初戦のカメルーン戦を北部の中心都市カノで戦い、1対2で敗れましたが、グループリーグ第2戦以降は北東部のバウチに移動。そこでアメリカ、イングランドに連勝してラウンド16に進出。同じバウチでポルトガルと戦い、PK戦を制して準々決勝に進み、以降は南部のイバダン、ラゴスで行われましたが、最も長期間に渡って滞在したのはバウチでした。