■「もっと上に行くにはハードワークとかスプリントとかだけじゃダメ」
そういう観点で考えると、今季のセルティックの環境は追い風と言えそうだ。というのも、ロジャーズ監督はプレシーズン最初のポルティモネンセ戦から彼を1トップに抜擢。前線からのハイプレスやハードワークを厭わず、猛然とゴールへ突き進んでいける攻撃の迫力と推進力を高く買っている様子だからだ。
「今の監督はFWが中盤でだいぶ落ちてボールに絡むっていうところがアンジェとは別だと思うので、今日はそこをうまくこなせたかなと思います。FWが中盤まで落ちると、相手DFが『どこまで行っていいのか』と迷う。難しいところがありますからね」と前田は新指揮官の意図を代弁していた。
この仕事を後半途中から出てきた古橋亨梧はスムーズにこなせず苦しんでいた。もう1人のFWである韓国人のオ・ヒョンギュも、長身のターゲットマンで下がって相手をかく乱するようなプレーはあまり得意ではなさそうだ。となれば、前田が8月5日のリーグ開幕・ロス・カウンティ戦から不動の1トップに躍り出ることも十分に考えられる。
そのうえで、リーグと9月から始まるUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)で結果を残せば、彼の存在価値は一気に上がる。そんな成功ロードを歩むことが可能になるのだ。
それだけ23-24シーズンは前田大然にとって重要なシーズン。ここでさらなる進化を遂げ、2026年北中米W杯への布石を打っておくことが何よりも重要なのである。
「カタールで上の人たちが真剣な気持ちで戦うことの大切さを伝えてくれて、『自分は次も出なきゃいけない』と強く感じました。
もっと上に行くにはハードワークとかスプリントとかだけじゃダメ。武器が1個でも増えれば増えるほどいいと思う。できることを増やして、自分の強みにしていけばいいと思います」
カタールでの経験を糧に貪欲に高みを目指そうとしている前田大然。非エリートの男が大成するのはここから。古巣・横浜戦で彼はその可能性を大いに示したのではないだろうか。