後藤健生の「蹴球放浪記」第138回「カタールワールドカップ取材で泊まる部屋」の巻(1)思わぬ形で始まった「インダストリアル・エリア」暮らし「一泊のお値段」は?の画像
同じデザインの建物が建ち並ぶ「バラハト」 提供/後藤健生

 ワールドカップが開かれているカタールは、蹴球放浪家・後藤健生にとって、勝手知ったる国である。だが、全土を知り尽くしているわけでもない。今回、2011年のアジアカップで「未開拓」だった地区に、思わぬ形で足を踏み入れることになった。

■バスの乗車賃が安い理由

「蹴球放浪記」の第122回「カタールの歩き方」で、僕はカタールは北の岬から南のサウジアラビア国境まですべて行き尽くしたかのように書きました。

 しかし、実はもう1か所、「行ってみようかなぁ」と思っていながらなかなか訪れる機会がなかった場所があったのです。

「インダストリアル・エリア」と呼ばれている地帯です。

 メトロ(地下鉄)は2019年開業ですから、2011年のアジアカップの時はまだ建設も始まっていませんでした。公共交通機関といえば、バスだけだったのです。

 バスは今回とは違ってアジアカップの時は無料ではありませんでしたが、交通系ICカードを手に入れれば1乗車3円くらいだったので、毎日バスを乗り回していた記憶があります。バスセンターに行けば、ルートマップももらえました。

 しかし、バスには裕福なカタール人は乗っていません。彼らは自家用車や運転手付きの自動車で移動しているからです。バスに乗っているのはインド亜大陸やアフリカ大陸出身の外国人労働者たちばかり。運転手も、もちろん外国人労働者です。

 つまり、バスは労働者たちのための乗り物だったのです。

 朝になると、労働者たちは南からバスに乗って続々とドーハにやって来ます。市内の建設現場やサービス産業などで1日働くと、夜にはまた南に帰っていくのです。

 その「南」、つまり労働者たちが住んでいるところが「インダストリアル・エリア」なのです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3