サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「ピッチの隅に立つ4人の仲間」。サッカージャーナリスト大住良之が、フットボールの「歴史の証人」について語る。
先端に旗をつけてピッチの四隅に設置される「フラッグポスト」は、現在ではボールが出たとき、副審がタッチラインに出たか、それともゴールラインに出たかを見きわめるために必要と解説されることが多い。野球の例で恐縮だが、外野の端についている「ファウルポール」のようなものである。
しかしこれがなぜ必要不可欠なのか、あまりよくわからない。『キャプテン翼』には意図的にコーナーフラッグポストに当てて味方にパスするプレーがあったように思うが、その世代ではない私にはよくわからない。
昔は、「コーナーフラッグめがけてけれ」という指示がよくあった。相手陣深くボールをけり込んでそれを前線の選手たちが追う、いわゆる「キックアンドラッシュ」の時代である。中央にければ相手GKに取られてしまう。コーナー近くの地域に落とせば、相手選手が先に到達したとしても、処理をもたつく間に奪うことができるかもしれない。あるいはまた、相手陣深くでスローインを得ることができるかもしれない…。
いまはこんな指示を聞いたことがない選手が多いかもしれない。しかし状況によっては、たとえば1点をリードしている試合終盤、相手に押し込まれ、自分の目の前にボールがこぼれてきたときには、思い起こしてもいい言葉かもしれない。
近年の選手は「クリア」がとても下手だ。ハーフラインを超えるか超えないかのボールを相手に拾われ、相手選手がこちらのペナルティーエリアに群がったままの状態でまた攻撃を受けるというケースをよく見る。1967年に東京の駒沢競技場で日本代表がブラジルの強豪パルメイラスと対戦したとき、日本代表のベンチに入っていたデットマール・クラマー・コーチは「クリアは横浜まで飛ばせ」と言ったという話が伝わっているが、現在のJリーグではこんなに立派なクリアができる選手はほとんど見ない。