われらが蹴球放浪家は、創刊して間もない『サッカー批評』誌のためのフランス取材中のある日、パリ郊外の小さな駅で降りて、かつては世界に名をとどろかせたスタジアムを訪れた。まさか22年後に『サッカー批評Web』でその日のことを書くことになろうとは……。ご好評をいただいて始まったシリーズ特集「ワールドカップ決勝スタジアム遍歴」の(その2)は、フランスで開かれた第3回ワールドカップのメイン・スタジアムを取り上げる。
■スタジアムの栄枯盛衰を確かに見た
1938年のワールドカップ以後もコロンブはフランス最大のスタジアムであり、1972年にパリ市内のパルク・デ・プランスが近代的なフットボール専用スタジアムに改装されるまでは、サッカーでもラグビーでもフランス代表の試合や国内のカップ・ファイナルではコロンブが使われていました。
国内リーグ(サッカー)ではラシンのホームでしたが、古豪ラシン(ラシン・クラブ・ド・フランスのサッカー部門)は戦後ずっと低迷を続け、1990年についに破産消滅してしまいました。そのため、1993年にメインスタンドを除いて他のスタンドがすべて取り壊されてしまったのです。ラシンはその後、アマチュア・クラブとして再建され、現在は5部リーグに相当する「ナシオナル3」に所属しており、今でもコロンブを使っています。
また、2017年まではラグビーのラシン92(フランスのトップリーグ、「トップ14」所属のプロチーム)もコロンブを使用しており、スタジアムを再開発するという計画もありましたが、ラシン92は別のスタジアムに移転してしまい計画は立ち消えになってしまいました。
今は、仮設席のようなバックスタンドが設けられており、1万5000人が収容できるらしいので、僕はこのスタジアムが最も寂れていた時代に訪れたということになります。
実は、その後、僕はここで国際試合も観戦しました。