東京オリンピックで、南アフリカとメキシコに連勝したU-24日本代表。しかし、勘違いしてはならない。1人少なくなったメキシコに対してボールを持つことができなかったし、コロナ禍に見舞われてただ守備を固める南アフリカを攻めあぐね、決勝点は久保建英の個人技によるものだった。日本の攻撃の生命線は中盤のビルドアップから攻め崩す、2列目の攻撃力にあるはずだ。日本がワールドカップで確実にベスト8、ベスト4に進むために必要なモノは何か。メキシコ戦は課題を突きつけられたゲームでもあったーー。
■南アフリカを破壊した久保建英の「技術の粋」
初戦の南アフリカ戦も、1対0で勝利したもののかなり苦しい試合だった。
内容的には日本が完全にボールを支配して何度も決定機を作った。だが、ファイブバック気味で守りを固めた南アフリカはゴール前にけっしてフリーのスペースを作らず、日本の選手はなかなかペナルティーエリア内に進入できず、また、せっかくの決定機にもなかなかシュートが枠をとらえられず、時間だけが過ぎていった。
そんな嫌な展開の中、残り時間も少なくなってきた71分、久保建英がまさに「個の力」によって打開して見せた。
遠くのスペースを見る“眼”を持つ田中碧が、右サイドに張っていた久保を見つけてロングボールで一気にサイドチェンジ。これを久保が左足で鮮やかにコントロールして、そのまま中に切れ込んで、左足でファーサイドに正確なシュートを決めたものだ。
ボールを足の近くにおいて小さなスイングで繰り出すキックは相手守備陣にとって非常にタイミングがつかみにくかっただろうし、体の正面を中央方向に向けたままのキックはGKにとってコースが読みにくかったはずだ。
まさに久保建英という選手の「技術の粋」が詰まったシュートであり、久保にとってはトレーニングを積み重ねてきた得意の型から生み出した会心の決勝ゴールだった。
相手の守備に苦しみ、パスを使った崩しではゴールまで届かないという嫌な流れの中で、日本は最後は「個の力」によって初戦をものにしたのである。