なぜ私が東京オリンピックに反対したのか(2)オリンピックの前にやることがあるの画像
新国立競技場 撮影/編集部
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東京という世界有数の巨大都市は、世界有数の「スポーツ貧困都市」なのである。そして私たちは、極悪な状況でなんとか活動をしている「スポーツ難民」なのである。世界からトップアスリートを迎えて「スポーツの祭典」をする都市の住民が、「スポーツ難民」であるというのは、どんな皮肉なのだろうか――。〉(本文より抜粋)

コロナ禍が来なくても、東京は、日本は、オリンピック招致に手を挙げるべきではなかったのかもしれない。オリンピックへの幻想はすでにはぎとられているーー。

■オリンピックの前にやることがある

 その東京がオリンピック? 何を考えているのだろうか。世界からトップアスリートを迎えて「スポーツの祭典」をする都市の住民が、「スポーツ難民」であるというのは、どんな皮肉なのだろうか――。オリンピックの前にやることがある。それは、東京を「スポーツ環境都市」とすることだ。この地で暮らし、この地の学校に通ったり職場で働いている人びとが、誰でも、手軽に、そしてスポーツを健康的に楽しむことができる町にすることだ。

 こんなことを書くと、「そんなことでは経済効果は見込めない」と言われるかもしれない。2007年にオリンピック招致を打ち上げたとき、当時の石原都知事は「日本を元気にするにはオリンピックしかない」と話した。とても印象的な言葉だったので、よく覚えている。石原都知事の「元気にする」とは、長引く不況から脱すること、すなわち、「経済効果」だった。オリンピック開催によって建設需要を増やし、それでみんなもうけて、また経済大国になろうじゃないか――。石原都知事はとても正直だったと思う。

 だがそれは、「スポーツ貧困都市」の現実を置き去りにすることを意味していた。何千億円、何兆円という資金が投入されて新しい競技場や関連施設、さらにはオリンピック開催都市にふさわしいインフラができるかもしれないが、東京の「スポーツ難民」がそれで減るわけではない。いや、それどころか、むしろ増えてしまったのである。

 ある程度の割合で東京都サッカー協会が使用できるサッカー場(簡単な観戦施設のついたもの)がいくつあるか、ご存じだろうか。現在では、駒沢オリンピック公園内の第2球技場とその脇にある補助競技場のほか、都内に数カ所しかないのである。その施設を利用して、東京サッカー協会は第1種(一般)から第4種(少年)、そして女子までの大会をこなさなければならない。もちろん無理だ。だから参加チームに使えるグラウンドを提供してほしいと、どの大会でも呼び掛けている。

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