■なぜ、フットボールなのか?
長年JFA機関誌の編集を引き受けてきた朝日新聞の山田午郎さんが急逝された後を継いで機関誌編集長(完全なボランティア仕事だった)を引き受けることになった轡田三男さん(朝日新聞)が、「蹴」の字が「制限漢字」で新聞では使えないこと(現在は常用漢字に入れられ、使うことができる)から、一般により親しまれているカタカナの「サッカー」に改めることにしたと、その号の編集後記で書いている。
「もっとも理事会席上で異論が無かったわけではない。竹腰(重丸)、川本(泰三)理事、とくに川本君はかなり強硬に反対した。筆者とても『蹴球』に多大の郷愁を感ずるのだが、それとこれとは別だと踏み切ったわけだ。川本君は『“わが蹴球人は”という調子で原稿を書くぞ』とおどすので、『編集のとき“わがしゅうきゅう人”と書き直すだけだ』と言ったら、『感じが出ねえなあ』と笑い話になった」
『サッカー』の機関誌タイトルは、1974年8月に協会が財団法人化されるまで続けられる。そして協会の正式名称が「日本蹴球協会」から「日本サッカー協会」になるのも、この法人化されたときなのである。テレビでも新聞でも、そしてファンもプレーヤーも「サッカー」以外の競技名は使わず、1965年に始まった日本サッカーリーグ(JSL)も当然のように「サッカー」の名称を使っていたのに、戦後30年でようやく「蹴球」とおさらばしたのだ。ちなみに法人化後、協会の機関誌名は『JFA news』となった。
JFAの英語表記は、「Japan Soccer Association」ではなく、国際性を意識し、「Japan Football Association」である。しかし日本語では「日本サッカー協会」である。その組織のなかになぜ「フットボール本部」が置かれなければならないのか――。「固いことは言わない」などと書いたものの、本音は、流行に乗った安易な名称に腹立ちがおさまらないのである。日本サッカー協会の組織名になぜ「フットボール」を使う必要があるのか、誰か教えてくれないか。