耐えていたヘタフェだったが、選手たちは限界をむかえていた。そしてそれは、ニョムがロディの足にアフターで突っ込み一発退場する、という形で表れてしまった。これでヘタフェの勝ちは考えられなくなった。残り時間を10人でなんとか守りきるしかなくなり、久保健英の出番は失われた。

 ニョムの退場は決定的なものだったが、アトレティコが交代でチームを大きく変える一方、ヘタフェは元のままの形でプレーするしかなく、そのツケが前半からアトレティコを抑え続けてきたニョムに回ってきた形だった。選手層の違いと、チーム全体の引き出しの多さでアトレティコが上回った、ということだ。それでも引き分けに持ち込めたことは、ヘタフェにとって上々の結果だろう。

 出番がなかった久保だが、この退場がなくても厳しい状況だった。アレニャが右サイドの位置でチームメイトの意識を変えさせるほど孤軍奮闘しており、久保の定位置は完全に失われていた。

 そして、序列の更なる低下は試合の最後からも見てとれた。

 後半アディショナルタイム、ヘタフェは久保を投入しようとしていた。結局、交代のタイミングが訪れる前に試合が終わり、久保はユニフォーム姿でピッチ脇からそれを見守っただけだったが、この役割は屈辱的なものだ。10人のヘタフェが最後に勝ちにいくわけがない。ましてや守備のために久保を入れるわけがない。これは単なる時間稼ぎ要員で、誰でもいい、という扱いであり、チームの中心選手には決してさせないことだ。10人になったことで出番がなくなった、ということで終わっていた方がマシだった。序列の低下は明らかで、回復の見込みはない。

 守備の形を取り戻し、その中でアレニャが躍動している。現在のヘタフェの立ち位置ではホセ・ボルダラス監督はこれ以上のリスクを冒すことはない。とうとう出番なしに終わっただけでなく、時間稼ぎ要員にまで立場を落とした久保。上向いているチーム状況とは異なり、明るい兆しは見られない。

 このままローンの終了をただ待つだけでは、殻を破れずにいつまでもこの繰り返しになってしまう。ここまで追い詰められて、その中で何ができるのか。今こそ久保の真価が問われている。


■試合結果

ヘタフェ 0―0 アトレティコ・マドリード

  1. 1
  2. 2
  3. 3