守備が弱いチーム、ビルドアップができないチーム、ロングボールに頼るチーム……久保にとって結果を出しにくい環境であることは間違いないが、それでも時間は与えられてきた。

 現在の久保は、チームを選べる立場ではない。プレーする機会を得るためにビジャレアルを抜けさせてもらい、ヘタフェに救ってもらった。そのことを思い出さなければならない。さらに、理想通りにはならなかったとはいえ、久保が活きるためのシステムも用意されて迎えられたのだ。そのことも忘れてはならない。欧州で何の実績も残していない選手には異例の好待遇で、それだけ期待も大きかった。時間が与えられたことも、結果を出せなかったことも事実として受け止めるほかない。

 ビジャレアルでは監督のせい。ヘタフェではチームメイトのレベルのせい。メディアからもファンからもそうした声は聞かれる。たしかに同情の余地はあるが、それを口にしてはいけない。ローン先を最終的に選んだのは久保だ。

 久保自身は、プレーできる喜びを口にすることはあっても、公の場で愚痴を言うことはない。何も成し遂げていない若手、しかも外国人枠となる選手がヨーロッパのトップレベルに生き残るための競争というのがどれだけ厳しいものであるかを、バルセロナの下部組織時代から知っているからだ。何もせずに、理想の環境を与えられることなどあり得ないということも十分理解している。

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