このシステムで最も重要なことは、ウイングバックのククレジャとダミアン・スアレスが1列上がってプレーすれば2列目が4人になることだった。これまでの3人よりも1人多くなることで、久保には自由に動き回る権利が与えられた。これまでの試合のように右サイドに大きく開くことをしても一向に構わないし、アレニャよりも左を走っていくことをするのも構わなかった。
しかも、ボランチのマウロ・アランバリが久保をサポートするように動いた。久保が基本となるポジションから離れてプレーしようとする時にはそこを埋め、久保がボールを持つ場合には近寄って数的不利にならないようにした。
守備の負担が減り、自由に動けて、アレニャもアランバリも近くにいてくれる。
それはつまり、だから相手を崩してくれ、という期待の大きさの表れだ。そして実際に、より結果を出しやすい環境を用意してくれようとした。
しかし、いきなりのシステム変更はそう単純に話が進まなかった。そもそものきっかけだった“久保とアレニャを近い位置でプレーさせれば”という部分が、久保に自由が与えられたことで距離が遠くなってしまってなかなか実現しなかったことに加え、アランバリは久保の行き先と思い切り重なってしまい逆効果になっていることが多かった。
79分、結果どころかインパクトさえ残せないまま、久保とアレニャは同時にピッチを去った。0-0の状態で攻撃の中心選手を2人揃って下げた、というのは、新しい試みが上手くいかなかった、という判断をボルダラス監督が下したということだ。