■ジダンのカリスマ性と気遣い
だが、やはり、ジダンはジダンだった。
優勝を決めるまでのリーガ37試合で、ジダンがスターティングメンバーを繰り返したことは一度もない。それは2つの点でメリットがある。選手マネジメント(主に選手たちのモチベーションのコントロール)と、フィジカルコンディションの調整だ。
「全選手が重要だ」というのが公式会見におけるジダンの口癖だが、セルヒオ・ラモスを頂点とした新たなヒエラルキーに秩序をもたらすため、彼が採ったアプローチは基本的に以前と同じだった。プレータイムの分配とコミュニケーションである。
ジダンが初めて本格的にマドリーでコーチングスタッフ入りしたのは2013-14シーズンである。ジダンにアシスタントコーチを務めさせていたカルロ・アンチェロッティ当時監督は「ジダンの親密さは日々の練習で役立っていた。彼は選手たちとの距離感が分かっていた。モチベートしたり、戦術的な説明をする術を知っていた」と振り返っている。
無論、選手としてのキャリアは大きい。それがカリスマ性に繋がっているのは間違いない。「選手たちはジダンの言葉を軽視しない。なぜなら、誰もがどのレベルでプレーしていたかを知っているからだ」とはトニ・クロースの弁だ。
ただ、カリスマ性というワードに引っ張られてはならない。ジダンは気遣いの人でもある。先のプレータイムの話でいえば、今季のマドリーでリーガにおいて1000分以上の出場時間を記録している選手は16名に上る。夏の段階で移籍騒動があったベイルにせよ、ハメス・ロドリゲスにせよ、ジダンは最後まで完全に見切りをつけることはしなかった。
Zidane tiene flor(ジダン・ティエネ・フロール)と、よく言われていた。「ジダンは幸運な男」という意味で、そこには彼を揶揄するニュアンスがあった。だがリーガ制覇を運で片付けてはならない。配慮とカリスマ。組織の再構築が、ジダンの手によって完遂されたのである。