■「彼ならしょうがない」致命的な弱点でも仕事が途切れない理由
それでも、仕事がなくならなかったのは一つにはフランス語を駆使した、他の人には書けない内容を書いていたからであり、もう一つには「田村さんなら、しょうがない」と皆が思っていたからです。
これも、放浪しながらも、周囲の助けを得て無事に帰ってくるのと同じで、田村さんの“人徳”というものなのでしょう。
「脳内の締め切り中枢がマヒしている」などと自虐ネタを放っていた田村さんですが、けっして締め切りを忘れているわけでも、軽んじているわけでもありませんでした。気にはしていたのです。しかし、それでも原稿を書き始めるわけではありません。ただ、「締め切りだぁ……」とつぶやいているのです。
これは、旅先などで彼が悩んでいる姿を何度も見かけた僕が証言します。
「締め切りだぁ、締め切りだぁ」と田村さんは悩み続けていました。なぜ、そうなってしまうかというと、実は田村さんはとても真面目だったからです。真面目だったから、脳内で原稿の内容がきちんとまとまらないと書き始められないのです。
そこが僕との最大の違いです。


























