■「引いて守る」甲府にとっての脅威

 試合内容を見れば、水戸の決定的なチャンスは45分に決勝点となった加藤千尋のシュート場面くらいだ。あの場面以外は、甲府がしっかりと守っていた。水戸は後半から奥田晃也を下げて山本隼大をピッチに送った。ゲームの流れを作れる奥田を最初に使って、パワーがある山本を後半に出場させる。特に、人数をかけて守ってくる甲府には、山本のロングシュートやカットインからのミドルシュートは、相手にとって脅威になる。

 なぜなら、甲府は引いて守っているので、遠い距離からシュートを打たれると、前に出てきてプレスに行かないとならない。そうすると、固く守っていたブロックを外して守備に行くので、攻撃のスペースが生まれることになるのである。

 甲府は、56分に佐藤和弘に代えて田中雄大を起用する。田中の起用によって、攻撃シーンに田中が顔を出すようになり、甲府にチャンスが生まれ始める。試合終了前は、水戸がラインを下げて守りに回ったことから、甲府のパワープレーで得点の機会が起こる。小林岩魚のクロスに田中が飛び込むが、ゴールまでは至らない。紙一重の攻防と映った試合だったが、実際は、甲府は今のやり方だと失点はしないが、得点は奪えないチームである。そんな試合運びを続けていては、今の順位から上位に行くことは難しい。 

 記事後半では、試合をシーンごとに詳細に分析していこう。

(2)へ続く
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