大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第160回「サッカー代表チームを持たない最後の国」(3)代表選手の募集も、代表ユニフォームの販売も「オンライン」、目標は「国際大会デビュー」の画像
マーシャル諸島サッカー協会(MISF)のエンブレム

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「南洋」の「サッカー未開の地」の話。

■離散者たちからの「掘り起こし」

 何よりも重要なのは、リヴァイとオウワーズの目標が一致していることだ。男女のサッカー代表チームを組織し、オセアニア・サッカー連盟(OFC)と国際サッカー連盟(FIFA)に加盟し、OFCネーションズカップやワールドカップ予選に出場することである。

 2人のアイデアはまさに現代的だ。長く続いた核実験による大気汚染、さらには近年の海水面上昇による危機感から、この数十年間で2万から3万人もの人がマーシャル諸島を去り、アメリカを中心に移住している。女子のフットサル代表がトレーニングキャンプを行ったアーカンソー州スプリングデールには、4000人のマーシャル人が暮らしているという。そうした「離散者」たちからサッカー選手を掘り起こそうというのである。

「気候変動により、近年、たくさんのマーシャル人が島々を去りました。私たちは、すべてのマーシャルファミリーとつながっていきたいと思います」

「あなたは海外にいて、マーシャル諸島の市民ですか、または係累にマーシャル諸島の市民がいますか。話をお聞かせ下さい。私たちはアメリカ合衆国内でイベントを行い、プレーヤーのリクルートと、コミュニティー活動をしていきたいと思っています」

 MISFの公式サイトには、こんな文章がある。そしてワンクリックすると、データ送信用のページが出てくる。氏名やマーシャル諸島との関係(1マーシャル諸島生まれ、2父母のどちらかがマーシャル諸島生まれ、3祖父母の誰かがマーシャル諸島生まれ、4マーシャル諸島と関係が深いか、現在在住している、5それ以外)などを書き込むだけだ。

 実際、2023年夏に女子フットサルチームの合宿をスプリングデールで行ったときには、200人もの応募があったという。

  1. 1
  2. 2
  3. 3