■同点弾の「時間」にチームの成長が読み取れる

 24分に先制された仙台だが、わずか2分後に追いついている。試合後の森山監督は、「失点したあとすぐに返せたのは成長」と話した。

 昨シーズンの全38試合を振り返ると、失点後5分以内に追いついた試合がない。「早々に決められると、それぞれが違うことをやったりしていた」と指揮官は続けたが、ビハインドを引きずることで試合展開が難しくなったところはあっただろう。

 同点へ持ち込んだ流れは、相手守備陣を意図的に攻略できていた。

 長崎は4-3-3のシステムで、アンカーの両脇にスペースがある。同点弾のきっかけも、左MF相良竜之介がそのスペースでボールを引き出したことにある。このアクションが長崎のMFを自陣へ下げ、中盤にスペースが生まれる。左SB石尾陸登がすかさず攻め上がってきた。

 石尾はドリブルで持ち出すと、ボランチ鎌田大夢へボールをあずけてペナルティエリア内へ侵入する。「鎌田からドンピシャのタイミングで、メチャクチャいいボールが来た」と石尾は振り返るが、MFとDFラインの間でリターンパスを受け、相手CBの股間を通したフィニッシュワークは鮮やかだった。大卒2年目の石尾は、嬉しいJリーグ初ゴールとなった。

 わずか2分でビハインドを跳ねのけた仙台は、その後も長崎のゴールに迫った。シュート数は7対6とほぼ互角だが、チャンスの数でははっきりと上回ったのだった。いい守備からいい攻撃ができていたのである。

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