■勝利を共有したい思い
常に周囲のために気を配る鬼木監督にとって、ラストマッチにかける思いは強い。選手に対しては「躍動させたい」と話せば、ふだんは表に出ないスタッフに対しての思いもある。常々、口にするようにサポーターへ熱い感情もあれば、6日の取材対応では番記者陣に対しても「やっぱり、勝ってるチームの取材をしたいじゃないですか。だから本当にそういう思いをしてほしかったので、悔しい思いもある」とまで明かしてくれた。
最終戦後、鬼木監督はサポーターを前に最後の挨拶を行う予定となっている。試合後は通常、選手と同じバスでクラブハウスに帰るが、この日は“別便”で出る予定。ラストマッチを最後の最後まで味わうための特別措置だ。
在籍8年間で「心残りな部分もある」という。それは、もっとタイトルが取れたという思い。日本人監督として最高位に立とうと、勝利への貪欲さと負けず嫌いの気持ちに揺らぎはない。
今季、タイトルを取ることはできなかった。それでも、勝つことの喜びを共有したい人がいる。選手、サポーター、スタッフ、そして番記者からも愛された名将が、等々力で最後の勝利をつかみ取る。
(取材・文/中地拓也)