サッカー日本代表が3−0とリードした後半17分に、森保一監督は堂安律に代えて菅原由勢、三笘薫に代えて伊東純也を投入した。
そのまま同じポジション同士で入れ替えるのではなく、菅原は右ウイングバックに、伊東は、チームが3バックを採用してからは初めてとなる右シャドーに入り、後半から同ポジションを担っていた鎌田大地が左に戻るという形になった。
カルヴィン・フェルドンクとラファエル・ストライクというインドネシアにとってはストロングである左サイドを抑えるために、守備能力の高い菅原を対面のサイドに入れて、その代わりに個人でも縦に突破できる伊東をセットで入れたというイメージはしやすい。またサイドバックの得意な菅原を右ウイングバックに入れることで、後半から左ウイングバックで出ていた前田大然のスピードをより前向きに生かすことができる。
確かに、その効果は出ていたが、それ以上にこれまで出番のなかった菅原が、攻撃面でその能力を見せたことが、この3ー4ー2ー1の可能性を広げる意味で大きい。日本の4点目のゴールを決めた菅原は「3点目を取ってからも、流れがどちらに転ぶか分からない中で、セットプレーを含めちょっと受け身になっていたので、その対策と、相手が前掛かりになっているところを僕と(伊東)純也くんでついていくように、森保監督から言われた」と振り返る。
■菅原が見せた追い越す動き
菅原は守備のタスクを第一にしっかりとこなしながら、自分たちのボールになったところで伊東のフォローというより、追い越す勢いで前に出ていく姿勢が目を見張った。ゴールシーンはボランチの遠藤航を起点に、右センターバックの橋岡大樹からパスを引き出して、伊東とのワンツーを菅原は結実させた。
そこからうまく抜け出して、するするとゴール右まで運んでシュートに持ち込めたことは、たまたまの部分もあったようだが、外側を素早く走るだけでなく、周りのボールプレーと連動しながら高い位置まで攻め上がれることは菅原の強みだろう。
その菅原と縦のコンビを組んだ伊東も、外側に張るというよりも、左サイドバックのフェルドンクと左センターバックのジャスティン・ハブナーの間を狙っていくことをベースに、外と中をうまく使い分けていた。左利きの堂安律が出ている状況で、伊東が右シャドーに投入されたら、ポジショニングや動きのメカニズムはまた違ったものになるかもしれない。右サイドの主力である堂安と伊東を同時に使うための組み合わせとしてはありだが、今回のように菅原が外側を使うことで、伊東の特性がよりインサイドで生かされるという意味では興味深いものがある。
■今後の日本のストロングに
2シャドーの組み合わせとしては伊東と鎌田という組み合わせはかなり面白い。二列目の一角にタメを作れる鎌田がいることで、伊東はあまり組み立てのところに気を遣わず、どんどん縦を狙う姿勢を打ち出すことができる。
もしシャドーのコンビが南野拓実や三笘であれば、同じ菅原との縦コンビであっても、伊東の動きは多少変わるかもしれない。伊東としては菅原との関係を含めて、3ー4ー2ー1になって初めてとなるこのポジションとしては上々のパフォーマンスだったと言えるが、どちらのポジションをやるにしても、伊東の良さが引き出される組み合わせを見出すことで、日本のストロングにしていきたい。
終盤には鎌田に代わって旗手怜央が左シャドーに入り、二列目で伊東と並び、セルティックの同僚である前田大然との左コンビで躍動的なプレーを見せた。最終予選でなかなか出番のなかった旗手のプレーは菅原と同じく”森保ジャパン”にとって前向きなものだが、彼が一人このポジションに入ってくることで、シャドーのコンビ、周りとの組み合わせもまた違った選択肢が生まれてくる。
森保監督としては1つ1つの試合で勝利を目指しながらも、ここからシャドーとウイングバックの有効な組み合わせを探っているはずで、ここまで使ってきた組み合わせをどう、ここからの戦いで活用していくのか。そこで生み出される新たな可能性というところは今後ますます注目していくべきだろう。
(取材・文/河治良幸)
■【現地撮影の画像】日本代表とインドネシア代表との試合後のピッチの上で2組の選手がユニフォーム交換した場面■
遠藤航と伊東純也がユニフォーム交換に応じた。
撮影:中地拓也
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