大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第138回【島対抗オリンピック「アイランドゲームズ」って何?】(2)「乳牛の故郷」代表がエース欠場、強風のイタズラにも負けずに「島々の王」にの画像
W杯カタール大会で優勝し、「サッカーの王」になったのは、アルゼンチンのリオネル・メッシ。撮影/原悦生(Sony α‐1)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、日本と同じ島=アイランドに住む人だけが参加できる(?)、あまり知られていない国際スポーツ大会の話。

■最終戦「男子決勝」に登場した乳牛の原産地

 サッカー女子は10チーム出場。決勝に進出したのは、スコットランドの北西沖に位置する「アウター・ヘブリディーズ」と、カリブ海の英国領「バミューダ」。バミューダは北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)と国際サッカー連盟(FIFA)に加盟する独立のサッカー協会の代表チームで、この当時のFIFA女子ランキングは147位。決勝戦も4-0で快勝した。大会を通じて5試合を全勝、総得点15、失点なしで2回目の優勝を飾り、「貫禄」を示した。

 男女合わせて54試合のサッカーの最終戦、7月14日午後3時半キックオフの男子決勝に登場したのは、北ウェールズからまるで川のような狭い海峡で隔てられた「アングルシー」と、「ホスト」のガーンジー島と同じチャンネル諸島にあり、同じように英国王室領である「ジャージー」。乳牛として世界に広まっている「ジャージー種」の原産地である。

 会場はセイントピーターポートの港から西へ約3キロ、町のはずれにある「フッツレイン・スタジアム」。5000人収容の陸上競技場で、2023年アイランドゲームズでは陸上競技の会場にもなったメイン・スタジアムだった。この島らしい風の強い午後。7月なかばとは思えない肌寒い日だった。

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