スタンドから投げ込まれた食べ物を、試合中の選手がピッチ上で口にする。浅野拓磨の行動がドイツ国中を驚かせたのは、1月16日のウニオン・ベルリン戦だった。
ブンデスリーガの放映権株式を外部投資家へ売却する計画に、各クラブのファンやサポーター団体が抗議。ボーフムのホーム、ヴォノヴィア・ルーアシュタディオンでも、試合中にテニスボールやコインを模したチョコレートなどが投げ込まれた。
そのひとつを浅野が食べた場面が、映像でとらえられたから大変だ。中継していたテレビの解説者は「食べてしまった!」とコメントしたが、周囲をさらに驚かせたのは前半終了間際に浅野が先制ゴールをゲット。3-0の快勝を導いたからだ。
万が一、毒物や禁止薬物が混入されていたら――心配する声が上がるなかで、複数のドイツメディアがウニオン・ベルリン戦後の浅野のコメントを伝えている。
「とても疲れていて、このままではハーフタイムまで持たないと思った。あまりおいしくなかったけど、大事なのはチョコレートでエネルギーをもらったことです」
すべてを前向きに考え、自分にプラスをもたらすと思えば迷わず行動に移す。プレー面で言えば、サッカーにはミスがつきものであり、例えしくじってもその後のプレーで挽回すればいい。浅野の脳裏には加点イズムが常に力強く脈打っている。