■格別の喜びを感じた「KLMのハーモニー」

 西川、槙野、宇賀神友弥(岐阜)、森脇良太(愛媛)、梅崎司(大分)…と確かに当時の浦和には発信力のある選手が揃っていた。彼らの発言の1つ1つに重みがあり、それがサポーターに伝わって、大きな渦を生み出していた。強いチームというのはそういうもの。そこでピッチに立てた時間を李忠成は本当に宝物のように感じているという。

「僕は今年限りで引退しますけど、何が悲しいかと言えば、サッカー選手としてお金をもらえなくなることじゃない。うまい選手と一緒にサッカーできなくなることが一番つらいことなんです。

 レッズ時代は『KLMトリオ』もそうですけど、自分たちのイメージが合致した状態でプレーできた。最高のハーモニーを6万人の大サポーターの前で見せられる喜びは格別です。それを実体験できるプロサッカー選手という職業は本当に素晴らしい。僕は貴重な時間を過ごさせてもらったなと痛感しています。

 まだ槙野たちも引退試合をしていないと思うし、できたら当時のメンバーと一緒に引退試合したいですね。槙野、柏木陽介(岐阜)、那須さん、そして小野伸二さん(札幌)が一緒に共演できたら最高ですよね」

 それが現実になれば、熱狂的サポーターも大歓迎のはず。第2次黄金時代とも言える面々の一挙手一投足を目の当たりにすれば、今の選手たちにも大いに刺激になるだろう。ぜひ形にしてほしいものである。

 いずれにせよ、浦和が今年12月のFIFAクラブワールドカップに参戦する。2017年のチームは初戦でアル・ジャジーラに不覚を取り、5位に甘んじたが、今回のチームはそれを越えるべく、勇敢な戦いぶりを見せ、好結果を残してほしい。OBである李忠成も心から成功を願っているという。

(取材・文/元川悦子)

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