「エリート化に逆行する変更」について聞こえてこない議論【Jリーグが動き出した改革への疑問点】(2)の画像
新方式のルヴァンカップでは、カテゴリーを越えた対戦が見られる可能性がある 撮影:原悦生(SONY α9Ⅱ使用)

 2023年シーズン、Jリーグは改革へと動き出す。各クラブ、さらには日本サッカーの将来を大きく左右し得る変化がもたらされるのだ。だが、その明確な理由や是非については、まだ議論になっていない。Jリーグの進むべき道について、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

日本代表を押し上げた育成組織

 かつて、Jリーグが経営危機に見舞われた頃には「クラブ数をあまり増やすべきではない」という意見も強かった。「チーム名を覚えきれない」とか「エリート化してレベルアップすべき」というのが理由だった。

 だが、クラブ数の拡大は日本サッカーのレベルアップにつながった。

 つまり、プロ野球(NPB)は純粋にプロ・スポーツの興行を行うための組織であり、選手は高校や大学の運動部からリクルートされてくる。それに対し、Jリーグはプロの興行を行うと同時に育成を目的とした組織でもあるのだ。30年前の発足時から、Jリーグ・クラブには育成組織の保有が義務付けられていた。

 全国にJリーグ・クラブの育成組織が存在しているからこそ、隠れた津々浦々のタレントを発掘できるのだ。従って、Jリーグ・クラブは全都道府県に存在するのが理想だとも言える。

 実際、30年前に「サッカー後進地域」と言われていた地域も含め、今では41の都道府県にJリーグ・クラブが存在し、さらにJFLなど下部リーグのクラブもJリーグ・クラブに範をとった育成組織を保有している。

 そうした育成組織を通じて優秀な若手選手が育ち、彼らがヨーロッパに渡って成長することによって、日本代表はワールドカップで2大会連続でラウンド16に進出するまで強化されたのだ。

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